2012年1月29日日曜日

【ビッグデータ】ビッグデータによって、経済活動にはどのような影響があるか? ⇒ 単純にGDPだけで語れなくなる


「ビッグデータ時代のオープンイノベーションの可能性」を発表した際に、「ビッグデータによって、経済活動にはどのような影響があるか?」という質問を頂きました。

Tokyo Stock Exchange / Dick Thomas Johnson

ビッグデータが単にテクノロジー分野の議論だけでなく、膨れ上がっていく情報による社会現象と捉えた場合、経済にも当然影響は出てきます。経済規模自体が縮小する可能性はありますが、単純にGDPだけでは全ては語れなくなってきます


  大量生産・大量消費の終焉
必要なものを必要なだけ利用する、という価値観が定着化しつつあります。少なくとも高度経済成長を支えた大量生産・大量消費による経済構造での成長は困難となってきており、生産をするにしてもその拠点は新興国に移ってきています。

“フリー”や”シェア”の概念がインターネットを中心に一般化してきており、消費者がサービスを利用するためには必ずしも金銭の支払いが必要ではないことも少なくありません(当然、高度なサービスには相応の対価を支払うわけですが)。また、ビッグデータによって作り出される社会環境は、必要なものを必要なだけ利用しやすい環境になっていきます。どのサービスをどのタイミングで、どこから提供して貰えればいいか、という情報を誰もが簡単に手に入れられるためです。

このため、大量生産・大量消費の経済構造は終焉を迎え、新しい経済構造が必要になってきます。


  一部のホワイトカラーは賃金の低下
ビッグデータの影響により、一部のホワイトカラーの賃金が低下する可能性も考えられます。

ビッグデータのテクノロジーを活用したサービスが発展すれば、事務処理や情報収集といった作業的要素の強い仕事は必ずしも日本国内で対応する必要はありません。製造工場と同様に労働コストの低い新興国の人材を使うことが可能になるからです。

つまり、作業的要素の強い仕事を担当しているホワイトカラーは、海外の安い労働力と競争せざるを得なくなり、結果的に賃金が下がらざるを得なくなります


  多くの機会を得ることが可能に=副業が増える
ビッグデータを利用することで、ビジネスマッチングはより一層柔軟に、多様になっていく可能性があります。

これにより、ビジネスに必要な人材を、必要なだけ、必要なコストで活用する、ということが一般化することは十分に考えられます。これは非常に優秀な、ごく一部の人材に限られた話ではありません。自分の持っているスキルや知識、時間を活用すれば誰しもが多くの機会を得ることが可能になります。

ホワイトカラーの賃金が低下する可能性を考えれば、今後副業が増えることは間違いないでしょう。「生活のための仕事」と「自分の好きな仕事・やりたい仕事」の2種類の仕事をもつ人も増えてくるかもしれません。



  GDPは低下するが、それだけで豊かさは語れない
大量生産・大量消費が終焉し、一部ホワイトカラーの賃金が低下すればGDPの縮小は避けられません。副業が増えたとしても、その縮小分を補うほどにはいたりません。少子高齢化を考えればなおさらです。

しかしながら、GDPの低下は単純に豊かさを喪失することを意味しません。「必要なものを必要なだけ」適正に利用できているのであれば、日常生活での利便性や楽しみが失われることはないからです。

したがって、GDPだけでなく、ブータンの国民総幸福量のような新しい指標が必要になってくるのです。