2012年1月27日金曜日

IBMソーシャルビジネス向け分析ツールが示すビジネスのカタチと可能性

1月16日にIBMは、ソーシャルビジネス向けの分析ツールを発表しました。これもまたビッグデータに対するアナリティクスサービスです。ここで注意したいのは、この分析サービスを単にアナリティクス機能の提供と見てはいけない、ということです。なぜなら、ビジネスとしてどのようなカタチで提供していけるのか、その先にどのような価値を生み出すことができるのかを示す事例として捉えることで、アナリティクス・サービスの可能性が見えてくるからです。


IBM Business Center / Daniel Voyager

  IBMのソーシャルビジネス向けの分析ツールとは
IBMのソーシャルビジネス向けの分析ツールの特徴は、
 ・社内に散らばる文書ファイルなどの情報(非構造化データ)
 ・SAPのような業務基幹系システムで利用される情報
 ・Facebookに投稿されている情報(SNSの情報)
を組み合わせて分析し、従業員の心情から市場動向までを分析する、というものです。


特に注目すべきことは、エンタープライズからソーシャルまでの連携している点です。今まではほとんどの場合に切り離されて考えれていたソーシャル・メディアの情報と、社内で利用している業務情報を組みあわせ、シームレスに繋げて分析しているのです。


考えてみれば、例えばSNSで炎上でもすれば、その対応記録は顧客対応窓口のデータとして残り、稼働状況や売上の影響は基幹系システムに残ります。もともと連動性を持っている情報なので、つなげてその関連性を整理していけば、問題の早期発見や将来のトレンド予測に活用できる可能性は高いわけです。




  背景には“スマータープラネット”構想
IBMが推進しているスマータープラネット。世界の都市をつなぎ、最適化された社会を実現しようというもの。日本でもスマーターシティとして展開しています。このスマーターシティにおいて、実はアナリティクスは非常に重要な役割を果たします。


スマーターシティは、都市レベルで社会の最適化を行う必要があります。ここでいう最適化とは
 ・安心・安全の維持
 ・エネルギーの効率的利用
 ・スムーズな交通サービスの実現
 ・医療サービスの充実
 ・行き届いた行政サービス
 ・次世代を担う教育システムの確立
を指しています。最適化を実現するには、問題点を社会的かつ俯瞰的な視点から捉えなければいけません。そのためには、消費者の行動から企業や行政のサービスにいたるまで、トータルに捉えることが必要となります。


つまり、スマーターシティを実現していく過程の中で、エンタープライズからソーシャルまで連携するアナリティクス・サービスが登場するのは必然ともいえるのです。




  まとめ:見えてきたビジネスとしてのアナリティクス・サービスのカタチ
IBMの提供する分析サービスは、企業としての価値を創造するためのモデルケースともいえます。スマータープラネットのための一過程として分析サービスを位置づけるのであれば、なおさらです。


まず、基本的な考え方として
 ・社会的価値の実現を念頭に置く(理念の追求)
 ・単一企業としてではなく、全体の関連性を俯瞰的に捉える
 ・全体の中で、自社の貢献すべきポイントを見極める
の3点が必要になりそうです。


そのうえで、アナリティクス・サービスとして提供するには、
 ・エンタープライズからソーシャルまでを連携させる
 ・社会的価値を創造するための示唆を与える(イノベーションに貢献する)
 ・長期的な発展の可能性につなげる
ことが求められてくるのではないでしょうか。


つまり、単に決められた範囲の情報を分析する従来型のデータマイニングやテキストマイニングではもはや不十分に成ってきているのです。長期的な企業の発展=社会的な価値創造に貢献するためのきっかけになる、未来への示唆を生む存在がアナリティクス・サービスであるべきではないでしょうか。




  余談
IBMのスマータープラネットは、今いろいろと企業が打ち出しているコンセプトの中で、私は一番好きなコンセプトです。野中郁次郎先生の知識創造の要素もあり、MITのオットー・シャーマー先生のU理論の要素もあり、いろいろなテクノロジーの要素もあり。未知の世界と可能性が広がっているからです。その分、難しい要素も多分にありますが。そのため、少々スマータープラネット支持派の意見になっている部分は差し引いて、今回の記事内容は受け取っていただければと思います。




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