2012年1月31日火曜日

【LODチャレンジ】「Linked Open Sourcing」 LODで実現する新しい働き方 副業も高齢者雇用も新卒採用も変わる

またもやLODチャレンジ、アイディア部門へのエントリーです。テーマは、ソーシング×LOD=「Linked Open Sourcing」です。思いついちゃったので。

Super Opening Live / Dick Thomas Johnson



昨今話題になっているソーシャル・ソーシングやクラウド・ソーシングといった新しい働き方。インターネット環境を利用して働くというものであり、在宅勤務の一つの形として注目されています。雇用者つまり企業サイドから見れば過剰に人材を抱えることなく組織を適正化することになりますし、被雇用者側からすれば育児中などでも働ける環境となっていくためです。そしてこのソーシャル・ソーシングやクラウドソーシングにLinked Open Dataの要素を加えた「Linked Open Sourcing」が実現できれば、より最適化された雇用システムが構築可能になります。



  「Linked Open Sourcing」の概要
「Linked Open Sourcing」は
 ・タイムリーに
 ・適正な金額で
 ・必要な質と
 ・必要な量の
リソース(被雇用者)と仕事(雇用者=企業)をマッチングするサービス。雇用のミスマッチを最小化することを目指す仕組みです。


  「Linked Open Sourcing」の仕組み
「Linked Open Sourcing」では、被雇用者(以下ユーザー)が持っているスキルや経験の情報と、企業の仕事で必要としているスキルや経験の情報をオープンにし、マッチングしていくものです。

ユーザーは以下の情報を公開することで、自分が持っているスキルや経験を公開し、マッチングの機会を得ることができます。
 ・職務経歴
 ・SNSへの投稿内容
 ・SNSなどのプロフィール
 ・ライフログ情報(チェックインなど)
ここでポイントとなるのは、企業が必要としているスキルや経験が“思いもよらないもの”であり、自分がそれに応える素養を持っていることを気付いていない可能性があるということです。例えば、「90年代に大坂に住んでいたことがある」ことが条件になることも、その当時の風習を調査している企業ならばありえるのです。そこで、主体的に登録する職務経歴だけでなく、SNSやプロフィール情報に加え、Open Graphなどで取得されるライフログも公開します。なお、どこまで公開するかはユーザが選択できるようにする必要があります。

企業側はリソースを必要としている仕事の情報を公開します。このとき企業側が正しく必要な要件を入力し、公開しなければいけません。少なくとも5W1H、つまり
 ・いつ
 ・どこで
 ・何のために
 ・どんな人が
 ・どのくらい
 ・いくらで
必要なのかは明示しなければいけません。しかしながら、これを企業側で精査するのはかなり難しいでしょう。そこでアナリティクス・サービスを利用します。過去の仕事の実績やインターネット上の情報などを利用して、仕事内容を入力すれば概ね上記の要件がシステムによって整理される環境を作るのです。そうすれば、企業側は微修正をするだけで必要要件を公開することが可能になります。

こうしたユーザーに関わる情報、ならびに企業側の要件を整理するために必要な情報をLOD化することが、「Linked Open Sourcing」の前提となります。インターネット上の情報を利用すれば、企業の信頼性を事前に確認する仕組みも提供でき(経営の健全性、仕事のきつさなど)、ユーザーにとって働きやすい環境がつくれるでしょう。そしてこれらの情報がでそろえば、あとはマッチングを行うことになります。マッチングは以下の3種類となります。
 ・ユーザによる仕事の検索
 ・企業による被雇用者ユーザの検索
 ・システムによる自動マッチング
このうち、LODで詳細な情報までオープンにされている前提に立てば、3つ目の「システムによる自動マッチング」が中心的なマッチングの方法となるでしょう。基本的にはシステムがマッチングし、細かい条件の部分を人間同士で調整する、というものがサービスのスタイルになるわけです。


  「Linked Open Sourcing」によるサービス
LODを利用してマッチングするため、
 ・スピーディーに
 ・膨大な情報の中から
 ・適合生の高いリソースと仕事
を結びつけることが可能になります。

これを踏まえると
 ・リアルタイム・マッチング
 ・タスク・マッチング
 ・プロジェクト・マッチング
の3種類のサービスが提供できるでしょう。


リアルタイム・マッチングは、今この瞬間に必要なリソースと、今この瞬間に時間のあるユーザーをマッチングできる仕組みになります。例えば、ちょっと入力作業を依頼したい、調べモノをしたい、アイディア出しに付き合って欲しい、といったものが考えられます。ユーザーがライフログを公開していれば、今この瞬間に時間が空いているかどうかはわかります。あとはリソースと仕事の要件からマッチングをしていけばよいのです。

タスク・マッチングは従来のソーシャル・ソーシングやクラウド・ソーシングの発展版です。「一定期間で○○をやってほしい」というリクエストに対応するものです。リソースと仕事の不適合を防ぐために、LODをつかって十分な精査を行うのです。当たりはずれが少ないマッチングサービス、というわけです。

プロジェクト・マッチングは、長期間にわたりチームとして一緒に働くことを目的としたマッチングです。「あわなかったから、やっぱり止めた」とはなかなかいかないのがプロジェクト。そのリスクを最小化するために、より適合度の高いリソースと仕事を、単純にスキルという側面だけでなく、性格的な部分も含めてマッチングするサービスです。LODだけでなく、SNSや過去の類似プロジェクトの情報なども含めた高度なアナリティクスの技術も必要になってきます。


  「Linked Open Sourcing」のマネタイズ
「Linked Open Sourcing」で収益を獲得するには、ユーザーと企業の間に立つことが必要になります。ここでポイントになるのが雇用条件の調整です。ユーザーと企業が直接交渉すれば手間がかかるので、手軽に手続きができる環境を用意するわけです。そして企業から提供リソースに応じた利用料を徴収し、被雇用者ユーザーに仕事の内容に応じてその収益を分配するようになります。要するに、派遣労働のシステムとほとんど変わらないわけです。

ただし、インターネットを通じたマッチングが中心になり、リアルタイムでも提供するため、ユーザー側・企業側共にサービスを安心して利用して貰える環境を作らなければいけません。被雇用者ユーザーや企業の客観的な評価情報、トラブル発生時のバックアッププランなどは精緻に準備することが必要になるでしょう。


  「Linked Open Sourcing」の可能性
「Linked Open Sourcing」は個人の働き方と、企業組織の柔軟性を間違いなく高めるでしょう。「Linked Open Sourcing」が一般化したと想定して、その可能性を整理してみます。

まず、副業する個人は増えるでしょう。機能的な側面で考えれば、「Linked Open Sourcing」によって自分の状況に応じて仕事をマッチングするため、副業するためのハードルが大きく下がることが要因に挙げられます。また、現在の経済情勢を考えると、一つの企業にいるだけではなかなか給料があがりません。大きな買い物はなかなかできませんし、将来の生活を考えれば不安にもなります。しかし、企業で働くにつれてスキルは上がり、新しいチャンスをつかめるようになっていきます。ここでリスクを背負って転職や独立をする前に、「Linked Open Sourcing」を利用して副業する人が増えるのです。

在宅勤務もさらに進むことになります。育児中であっても仕事は続けやすくなるでしょうし、高齢者や体が不自由な方も社会参加がしやすい環境となるでしょう。極端な話、インターネットが利用可能であれば仕事はできるわけですから、雇用機会を大きく広げることになります。これは少子高齢化社会の社会保障問題の解決にも寄与します。高齢者が社会参加して働ける環境を作ることで、年金にたよらずとも収入を安定させることができるからです。増加を続ける生活保護(とくに若年層)の改善にも役立ちます。

企業側に立ってみると、まず従業員を抱え込む必要性は低くなってきます。少なくともルーチンワークとなっている業務についてはアウトソースすることが当たり前になりますし、スポットで(1ヶ月に数日など)必要となる仕事についても「Linked Open Sourcing」で確保すればよくなります。正社員として必要なのは企業の競争力になる人材のみ、となるでしょう。その結果、組織の大きさは単純に競争力を示すものではなくなってきます

では、どのように企業は競争力のある組織を作ることになるでしょうか。それは組織としての柔軟性にかかってきます。「Linked Open Sourcing」を使うことになれば、毎回同じ人材を登用できるとも限りません。結果的に業務に関わる人も増えます。少なくとも競争力に直接関係のない業務は誰がやっても同じ成果になるように整理する必要があります。また、場合によってはスポット的な人員ではあっても、やはり正社員として確保しておきたい人材はでてきます。こうした人材をどこまで許容し、企業側も従業員側もメリットのある雇用形態を創るかが重要になってきます。

もちろん、このように働き方が大きく変われば新卒の就職活動にも変化は起きます。大学3年生の終盤から就職活動をする、という常識は壊れるかもしれません。大学在学中から「Linked Open Sourcing」でちょっとずつ働きながら、正規雇用をしてくれる企業を探す。または「Linked Open Sourcing」のマッチングがスピーディーにできることから、大学4年生の夏ぐらいから就職活動を行うことが常識になる。などということもありえるかもしれません。


  最後に
「Linked Open Sourcing」は、働き方を変える新しい仕組みです。社会に広く雇用の機会を作り、社会保障の問題解決に寄与することができます。しかし完全な解決には、単に「Linked Open Sourcing」を実現するだけでは不十分です。「Linked Open Sourcing」をきっかけに、被雇用者側、企業側両方の“働き方”に対する価値観を見直し、新しい雇用システムを作ることが不可欠なのです。