2012年2月20日月曜日

ドリランドのカード不正複製で3000万円荒稼ぎ ⇒ ソーシャル・ゲームは“搾取型”課金システムからの脱却が必要

ソーシャル・ゲームとはいかにあるべきか、ユーザにとってどのような存在であるべきか、その倫理観とは何か、本当に考えるべきが着ているのかもしれません。ソーシャル・ゲームのアイテムを増殖させオークションで売りさばいて荒稼ぎしている事例が発生してしまいました。

ドリランド Doriland / Zengame



  何が起きたのか? ⇒ ソーシャル・ゲームのアイテムを増殖してオークションで荒稼ぎ
事例がおいたのはGreeが提供するソーシャル・ゲームの探検ドリランド。探検ドリランドはカードゲームで基本無料ですが、レア・カードを手に入れるために、有料でガチャを利用することもできるようになっています。ちなみにガチャでカードを揃える場合、20万円以上かかることもあります(シミュレータによる数字)

問題はこのレア・カード。一部のユーザがゲーム・システム上の問題点を突いて不正に複製し、それをネットオークションで1枚数千円~数万円で売りさばいていたのです。ユーザによってはたった5ヶ月で3000万円以上を売り上げていました。

この事態を受けてGreeでは探検ドリランドの一部機能(トレード機能)を2/19より停止する事態となっています。


  何が問題? ⇒ そもそもカードの売買が成立することが問題
今回の事例の問題点を整理すると、大きく3つあります。
 ・ゲーム・システム上の問題
   ⇒ 複製ができてしまうバグが存在する
 ・一部ユーザによる不正利用の問題
   ⇒ ゲーム・システム上の問題を突いて、実際にカードを複製するユーザがいる
 ・カード売買の問題
   ⇒ 複製されたカードをネットオークション等で買うユーザがいる

では、この問題によって誰が損失を被っているのでしょか。
Gree : ガチャによる課金機会の損失
 ⇒ 本当はガチャを使ってくれるはずのユーザが、ネットオークションでカードを手に入れてしまうため
オークションでカードを買うユーザ : カード購入による直接的な金銭の損失
 ⇒ ガチャでやれば数百円で手に入るかもしれないものに、数十万円支払う
基本的にはこの2者でしょう。ただし、オークションでカードを買ったユーザについては、もしかしたらガチャで手に入れるよりも勝ったことで安く済んでいるのかもしれないので、100%被害を被っているとは言い切れないかもしれません。

しかし、実はここに根本的な問題があります。つまり「有料ガチャをやるよりも、カードを買ったほうが安くすんでしまう(かもしれない)」課金システムが根本的な問題なのです。結局のところ、カードの売買が成立しなければ、だれもわざわざ不正に複製しようとすることもなく(するとしても小規模)、単なるゲーム・システム上のバグで済んだ話なのです。

ちなみになぜ
 「ガチャ > 買う」
とユーザは考えてしまうユーザがいるのでしょうか。おそらくはガチャは不確実性が高く、ギャンブル的な色合いが強いため、欲しいカードが手に入るまでにいくらかかるかが見通せないことが要因でしょう。このため、多少値が張っても、確実に手に入る“買う”という行為を選択しているのだと考えています。


  根本的な解決は? ⇒ 搾取型課金システムを捨て、ゲームによる新しいビジネスモデルを創造すべき
根本的な問題が課金システムにあるのであれば、修正すべきものも当然課金システムです。ギャンブル生を高めて小額サービスを多数回利用させて課金する現在の仕組みは、誤解を恐れずに言えば“ユーザから搾取するためのシステム”です。それが生み出す社会的な価値は非常に限定的でしょう。そして、社会的に意味のない仕組みは廃れます。

もちろん、ソーシャル・ゲームはビジネスとして提供されるため、その継続には収益が必要です。これを否定してしまったら、すべての社会生活が成り立たなくなります。では、どうすべきか。答えはシンプルです。搾取型の課金システムをやめ、正当な対価を得る課金システムに修正するのです。ただし、実現は簡単ではありません。最低限、
 ・ギャンブル性を抑えること
 ・ユーザに選択肢があること
 ・対価を払った場合は明確なメリットがあること
という条件を揃えた上で、ビジネスとして継続必要な収益を得られるモデルを作っていくことが必要です。ビジネス的な視点から見れば、簡単に稼げるシステムをあえて捨て、ビジネスモデルを作り直さなければいけません。それは単純なゲームではなく、ゲーミフィケーションを提供行う必要がある、ということかもしれません。こうした変革ができなければ、ゲームへの不信感が募り、ソーシャルだけに限らずゲーム市場全体の停滞を招く危険性すらあるのではないでしょうか。


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