2012年2月21日火曜日

【ネタバレBookReview】スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則

カーマイン・ガロ
日経BP社
発売日:2010-07-15
いまさらながら「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン」を読んでみました。この本自体はスティーブ・ジョブズが書いているわけではないのですが、スティーブ・ジョブズがなぜ印象的なプレゼンができるのか、どうやったらできるか、ということがとてもシンプルにわかりやすくまとめられています。よくよく見てみれば、プレゼンの教科書に載っているような内容ですが、スティーブ・ジョブズという見本があることで理解がかなり深まります

以下、要点と解釈の整理です。

  プレゼンの考え方
プレゼンテーションは大きく3つのステップで作ることが必要です。
 ・ストーリーを作る
 ・体験を提供する
 ・仕上げと練習をする

このとき、忘れてはいけないことは、聞き手は興味がなければ聞いてくれない、ということ。つまり、聞き手が何を聞きたいと思っているか、それを考えなければいけないのです。聞き手の反応は、
 ・聞いていない
 ・理解できない
 ・興味をもつ
のいずれかということを念頭において、如何に興味を持ってらえるようにするか、という点にフォーカスしてプレゼンテーションを行わなければいけません。

このとき必要なものはストーリーです。かっこいいスライドではありません。聞き手にとって受け入れやすい言葉で、流れるようなストーリーで、プレゼンテーションで話している内容の“世界”に引き込むことが必要なのです。


  ストーリーを作る
ストーリーを作るステップは7つあります。

①計画はアナログでまとめる
あまり形にとらわれずに、紙とペンをつかって自由に伝えるべきことを描いていくことが必要です。紙とペンは最強のユーザインタフェースである、というのはコンピュータサイエンスの教授の有名な発言ですから。

②一番大事な問いに答える
結局、聞き手に何を伝えるかをクリアにしなければいけません。言い換えれば、「なぜ聞き手がその話を聞く必要があるのか」という問いに対して、明快な解を出さなければいけないのです。

③救世主的な目的意識を持つ
聞き手に聞いて貰う必要性を踏まえ、なぜそれを伝えたいのかを明確にしなければいけません。何かを改善する、何かを生み出すといった目的を、情熱をもって説明できる一文が必要なのです。

④ツイッターのようなヘッドラインを創る
伝えるべきポイントを、70文字程度で伝えられるシンプルな言葉を作ります。いわば、スローガンのようなものです。これを徹底的に、プレゼンテーションの中にちりばめ、聞き手に印象付けることが必要です。

⑤ロードマップを描く
伝えるべきポイントをリストアップし、3つに絞込み、流れをつくります。これがプレゼンテーションのストーリーの軸、つまりロードマップになります。ここに肉付けをするように、体験談や事実、推薦の言葉、アナロジー、データなどを付け加えていくのです。

⑥敵役を導入する
プレゼンテーションの早いタイミングで敵役を登場させる、つまり解決すべき問題を明らかにすることが必要です。この敵役に対し、困っていることを聞き手と共有し、共感を得ることで、後のストーリーに引き込みやすくなります。

⑦正義の味方を登場させる
敵役に対する正義の味方、つまり自分たちが伝えたいことを登場させます。正義の味方に対する支持は、敵役を登場させておくことでより得られるようになっているわけです。


  体験を提供する
体験のステップは6つあります。

⑧禅の心で伝える
これは「シンプルにする」ということです。余計なものはそぎ落とし、本質だけを見つめることが必要ということです。もっと簡単に言えば、1枚のスライドで言うべきことは1つに絞り、文字ではなく絵を使い、イメージを共有することが必要です。そしてそれは、聞き手の目をひく美しいスライドであることが必要です(ちなみに写真などを使えば十分です)。

⑨数字をドレスアップする
プレゼンテーションには具体性、意義、文脈が重要です。そのためには意見を支持するデータを添えることが不可欠なのです。

⑩びっくりするほどキレがいい言葉を使う
プレゼンテーション中に使う言葉をシンプルに、すっきりさせることが必要です。とくに強調して使うメッセージは、シンプルで、印象深いコピーにすることが必要です。

⑪ステージを共有する
話し手の一方的なプレゼンテーションではなく、聞き手にも参加してもらう、他の人にも参加してもらうことが必要です。その一つの形は関係者への感謝の言葉です。そして関係者からの言葉を紹介することも手段となります。

⑫小道具を上手に使う
製品のデモや、動画イメージ、ちょっとした演技を盛り込むことが必要です。ただ聞いているだけでは聞き手は理解できません。なぜなら、情報を目から吸収種る人、耳から吸収する人、体から吸収する人という3タイプがいるため、それぞれの人たちが理解できる形を作る必要があるからです。

⑬驚きの瞬間を演出する
聞き手に感動を与えることが必要です。その感動は、非常に強い印象として残ります。ではどうやって感動をあたるか。それは驚きです。聞き手が予測していなかった、“とっておき”をストーリの中に用意することが必要なのです。


  仕上げと練習をする
仕上げと練習には5つのステップがあります。

⑭存在感の出し方を身につける
単調に話すのではなく、声の大きさ、抑揚、体のアクションをつかって聞き手の注目を集めていきます。韻を踏んだ、心地よい言葉を用意することも必要です。

⑮簡単そうに見せる
プレゼンテーションを練習し、自然に話せるように鍛え上げます。ビデオにとってチェックすることも有効です。また難しい質問に対しては、7つ程度のカテゴリーを用意し、あらかじめ想定問答を用意しておきます。もしプレゼンテーション中に質問がでてきて、難しい質問が出てきても、その7つのカテゴリーに結び付けて回答することで対応できます。

⑯目的にあった服装をする
いわゆるTPOです。自分の伝えるべきメッセージと、場の雰囲気を考えることが必要です。崩すのであれば、スマートに崩さなければいけません。

⑰台本を捨てる
プレゼンテーション中は、話すことはすべて頭に、体に覚えさせておくことが必要です。最初はシナリオを作りきり、あとは見ないでいいようにしていきます。舞台役者になりましょう。

⑱楽しむ
最後はプレゼンテーションの瞬間をとにかく楽しむことです。聞き手の反応も、話している途中で噛んでしまうことも、全部まとめて楽しみましょう。楽しい空間で、伝えるべきことを、聞き手のために伝えればよいのです。