2012年4月19日木曜日

盛んになってきた農業・水産業への支援 ⇒ 6次産業化への動きは活発化、課題は既得権益


日本の産業構造は第3次産業が中心となっています。しかし昨今再び農業や水産業にも注目が集まり、支援の仕組みも具体的になってきています。

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  日本農業経営大学校開設 ⇒ 企業ニーズに応えられる農業のプロ育成へ
ニチレイやイオン、大手商社など200社によるアグリフューチャージャパンは、2013年4月に東京都内で「日本農業経営大学」を設立することを明らかにしました。後継者が少なく、衰退している日本の農業を支える仕組みとして、企業のニーズに対応できる農業経営者の育成を目指します。経営理論や農産業連携の方法などを中心のカリキュラムになるとのこと。対象者は大学卒業程度の学力をもつ、農業従事者または農業分野での起業を目指す若手起業家。全寮制となっており、定員は20名程度となっています。


  仙台で水産業向け民間ファンド ⇒ 水産業起業への支援へ
仙台で被災地の中小企業向けに支援を行っている民間ファンド「一般財団法人東北共益投資基金」は、漁業や水産加工業で起業を目指す起業家を対象としたファンド「復興キャピタル」を設立します。事業資金としては1事業当たり最大500万円。ファンド総額は5000間年を予定。専門家が支援先を選定して資金を支援するだけでなく、経営ノウハウや商品開発等の支援も行います。


  動きは6次産業 ⇒ 農業・水産業などに従事する経済メリットを創出
こうした農業や水産業の支援が行われていますが、必要なカタチはこれまでとは異なってきます。なぜなら、伝統的な農業・水産業の形態では事業として安定しにくく、継続して従事することが難しいためです。事実、若手事業者が少なく、農業・水産業では高齢化が顕著になっていました。

そこで求められているのが6次産業化です。6次産業とは、
 1次産業 × 2次産業 × 3次産業
の掛け算をした新しい産業形態です。つまり、農業や水産業などの1次産業をベースにするのですが、同時に生産品加工の機能=2次産業の機能を持たせるのです。さらにその加工品を販売・提供するサービス=3次産業も付加し、一貫したバリューチェーンを作り上げることが求められているのです。

6次産業化は事業者は経済的に大きなメリットを得ることができます。例えば米の生産者の場合、米を生産するだけだと農協との取引だけで終わります。しかし、米を加工した商品(米粉、もちなど)を作れば、加工した分の付加価値を載せて販売することができます。当然、農協との取引に比べれば大きく利益を得ることができます。さらに、この加工品を利用したサービス、たとえば米粉を使ったパンを提供するカフェの運営や自然食品を取り扱う小売店を運営を行えば、さらに収益を獲得することができるのです。なお、現実的には全ての事業活動を単独で行うことは困難なので、企業との提携や地域コミュニティでの共同事業化が具体的な手段として必要となります。


  実現への壁は既得権益 ⇒ 産業構造全体の変革は避けては通れぬ道
6次産業自体は農林水産省が提唱していますが、推進には壁があります。その壁とは既得権益の構造。必ずしも全てがそうだとはいえませんが、農協や漁協は伝統的なコミュニティとして形成されている状態。関係者が利益を得られるような関係性が出来上がっている構造があり、天下りも少なくありません。

6次産業の動きが活発になれば、既得権益にとっては脅威になるわけですから反発は必至です。しかしながら、それは目先の利益にだけ目が向いた議論であり、社会的に求められる本質を突くものではありません。6次産業を実現していくためには、既得権益を含めた産業構造の変革が求められます。