2012年6月8日金曜日

会議が変わると組織が変わる(後編) ⇒ 組織を補完する3つの”D”のサイクル

組織のコミュニケーション上の欠陥を補う会議。その会議を機能させるためにはセオリーを守るだけでなく、ダイアログ(Daialog)、ディスカッション(Discussion)、ディシジョン(Decision)の場を使い分けることが必要です。では具体的にどういったアプローチが必要なのでしょうか。

ysakaki

  ダイアログ(Daialog) ⇒ 対話でお互いの共通理解を
ダイアログはお互いの共通理解を得るための会議です。ポイントは
 ・対話を基本として、どのような意見でも受け入れる
 ・参加者の自由な意見を尊重し、議論を発散させる
 ・自由な議論から収斂された共通認識を得る
といったところです。

実施方法はいたって簡単です。抽象的なテーマを設定し、関係しそうな人に声をかけて集まってもらい、自由に話をしてもらうだけです。ただし注意点が一つ。ただ人を集めただけだとダイアログはうまくいきません。いつもの会議室で、上司が見張っている中で「ダイアログしろ」と命令するようなことがあったのであれば、間違いなくダイアログは成立しません。

そこで必要になるのが、場の雰囲気作りです。例えばカフェのようなリラックスした雰囲気で、雑談するように話ができると、実にいろいろな意見が出てきます。したがって、場合によっては喫茶店に移動したり、オープンなスペースでお茶を飲みながら行ったりすることも有効です。ただしこのとき、だれ過ぎてもいけません。何を話しているのかわからなくなります。そういった意味では、会議のセオリーをゆるく適用しておくことも必要になります。ワールドカフェの手法は、非常に良い参考になります。

なお、ダイアログは必ずしもオフィシャルに時間を設定して行う必要はありません。例えば休憩時間にちょっと話しかける、ランチタイムに相談するなど、ちょっとした時間に話しかけることでも成立させることができます。そしてその回数を増やしていけば、十分に共通理解を得ることができます。また、必然的に組織内のコミュニケーションの量がふえ、会議の質も上がっていくことになるでしょう。


  ディスカッション(Discussion) ⇒ 特定テーマの深堀と結論を
ディスカッションは特定のテーマについて議論を行い、結論を得るための会議です。
 ・明確なテーマがあり、関係する情報を揃えていく
 ・結論に向けて意見を収束させる
 ・意見を体系的に整理し、明確な結論を出す
というあたりがポイント。一般的によく行われている会議です。

実施方法もセオリーどおりでよいでしょう。ただし注意点があります。それはいきなりディスカッションを行おうとしても、会議の質はなかなか高まらないということです。なぜなら議論を行うためには、前提として参加者の共通認識が必要です。共通認識がなければ議論の方向性がまとまらず、無関係の情報も散見されるようになり、まとまるべきものもまとまらなくなります。したがって、ディスカッションの前提にはダイアログが必要になるわけです。

なお、このディスカッションに参加するメンバーはキーパーソンに絞り込むことは必須です。だれもが参加できる場にするのではなく、実行力のある人物、コミットメントができる人物のみが参加するべきです。例えば関係者を全員集めて”とりあえず”会議をすれば、実行には無関係の人物も含まれます。そうした人物は得てして評論家的な意見を出したり、会議中に会議とは関係ない作業をしたり、無関係のトピックをあげたりと、会議の場を壊します。もちろん、別の視点からの意見は必要ですが、それはダイアログとして行うべきでしょう。ディスカッションの場ではとにかく、テーマに集中し、結論にいたるためのメンバーに厳選することが必要なのです。


  ディシジョン(Decision) ⇒ 明確な意思決定を
ディシジョンは意思決定を行うための会議です。ポイントは、
 ・意思決定が必要なテーマと、必要情報がまとめられていること
 ・意思決定者が出席していること
 ・テーマに対して何らかの意思決定を必ず行うこと
といったところであり、とにかく意思決定にフォーカスすることが必要になります。

このとき、ダイアログとディスカッションと大きく異なる点があります。このディシジョンでは基本的に議論は行いません。意思決定しかしないのです。したがって、一つあたりのテーマに与えられる時間は少なく、そのかわり数多くのテーマをさばいていくことが必要になります。

実施に当たっては準備が非常に重要になります。まず、意思決定の対象テーマと必要な情報はシンプルにまとめあげなければいけません。一言で要点を伝えられなければいけません。エレベーターストーリーというものです。10秒程度で相手の興味関心をひきつけられるぐらいにブラッシュアップしておかなければいけません。そのためにはダイアログとディスカッションを経て、ディシジョンの場にあがってくることが必要です。

そのうえで、意思決定者に対しての根回しは不可欠でしょう。これは当該テーマを持ち込む担当者の仕事です。意思決定者に対してダイアログの場を事前に持ち、ディスカッションの場にも必要に応じて参加しておいて貰う、といったアプローチが必要です。もし相手が社長であったり、上位の役職者でそういったダイアログやディスカッションの場をもてないのであれば、周囲の協力を得ることが必要になります。いずれにしても根回しは必須であり、言い方をかえれば、あらかじめ意思決定は内々にとりつけておき、オフィシャルにするのがこのディシジョンの場であるべきでしょう。

そのうえで、ディシジョンの場では、短時間にシンプルに意思決定をしていきます。このとき、意思決定の結果は明確でなければいけません。やるか、やらないか。そのいずれかであるべきです。もちろん情報不足で判断できないことがあるかもしれません。その場合でも、“再検討”という結論に至るのであれば時間を無駄にしています。極力避けるべきです。間違っても、“もう一度最初から調べなおそう”という結論は行わないようにしなければいけません。なぜなら意思決定は明確に次のアクションを決める場だからです。やると決めれば、出てきたテーマが実行に移ります。やらないと決めれば、新しいテーマに取り組むことができます。中途半端は厳禁なのです。


  まとめ:良質な組織には3つの”D”のサイクルを
組織の欠陥を補う会議。それにはダイアログとディスカッションとディシジョンがあります。そして全てはダイアログから始まります。ダイアログによって得られた共通認識があるからこそ、ディスカッションでより深い議論ができ、明確な結論を得ることができます。そうしてブラッシュアップされていくことで、すばやいディシジョン=意思決定にいきつくわけです。そあらにその意思決定をうけて、新しいアクションが見えてきます。すると再びダイアログに戻り、新たな活動につながっていくわけです。ダイアログ、ディスカッション、ディシジョン、この3つの“D"を使い分け、サイクルとして実行し続けることが、組織の欠陥を補うために必要なのではないでしょうか。